コンタクトレンズ

  • 2024年3月24日
  • 2024年3月23日
  • 日常

私はコンタクトレンズが苦手だ。

 

コンタクトを装着しているときの感覚が嫌というわけではない。不器用すぎて目の中に入れるのに時間を要すということだ。

 

視力の悪い私は、普段は眼鏡をかけて生活している。だが何らかの事情でコンタクトを付けなければならないときがある。

例えばこの間、事務所で宣材写真の撮影をした日。裸眼ではカメラのレンズの位置が見えなくて困ると思い、朝起きた私はコンタクトの装着を試みた。

 

当然のごとく、レンズが目に入らない。

 

思えば学生時代、初めてコンタクトを作りに眼科へ行ったときもそうだった。看護師さんの説明を聞き、コンタクトを入れようとしても、中々目に入れることができない。

私の後に来た中学生くらいの女の子が、私より先にやすやすとコンタクトを装着し終えた。私は一人コンタクトと格闘し続ける。見かねた看護師さんが、私にもう一度同じ説明をする。

どのくらい時間がかかっただろうか、やっと右目にコンタクトを入れることに成功した。初めてコンタクトを入れることができた私が感じたのは達成感ではなく、これから左目にもコンタクトを入れなければならないという絶望感だった。

 

せっかくなので、いつも私がコンタクトを入れるときの流れについて説明しようと思う。

こちらがその図(横軸が時間)。

以下解説。

 

0分(レンズ装着開始)~3分:入らない

よしコンタクトを装着するぞと気合を入れる。ワンデーコンタクトを開封し、右の中指の腹にコンタクトを載せる。左手の中指と右手の薬指で右目を大きく開いた後、慎重にコンタクトを入れようとする。入らない。

コンタクトの液で手が濡れて滑るため、いったん右手中指以外の手をタオルで拭く。気を取り直してもう一回。入らない。たまにコンタクトが半分につぶれるので、その度に指で開く。ここまでの一連の流れを何度か繰り返す。

 

開始後3分~4分:自己嫌悪

コンタクトを入れることができない自分の不器用さが嫌になる。そもそもなぜ私以外の世の人は、コンタクトをいとも簡単に装着できるのだろうか?

私は何年コンタクトを入れるのに苦しんでいるのだろう。コンタクトを装着するのに時間がかかるから、自然とコンタクトをつける回数が減る。その結果、コンタクトをつけるのがますます下手になる。

 

開始後4分~6分:成功(右目)

グダグダ考えていても仕方がない。気を取り直してもう一度。入らない。それでも再びチャレンジしつづける。

諦めようとしたそのとき、コンタクトが瞳にスッと張り付くのを感じる。右目のコンタクトを装着することに成功したのだ。束の間ほっとした気分になる。

 

開始後6分~8分:入らない(左目)

この調子で左目も装着しようと意気込む。入らない。先ほど右目にコンタクトを装着したときの感覚を思い出そうとしてみる。すでに忘れている。

先ほどコンタクトを装着できたのはなぜだったのか。ただの運だったのだろうか。コンタクトを装着した瞬間が思い出せない以上、左目はゼロからのスタートになる。

 

開始後8分~9分:絶望

なぜ私はこれほどまでにコンタクトを入れるのが苦手なのだろうか。そもそも今までコンタクトを入れようと悪戦苦闘してきた時間を合わせたら何十時間になるのだろうか。その何十時間で他に何かもっと有意義なことができたのではないか。こんなことで悩んでいるのは世の中で私だけなのではないだろうか。

 

開始後9分~10分:成功(左目)

気持ちを切り替える。何度目の挑戦かを数えることすら忘れた後、コンタクトを入れるのに成功する。

安心した。私はついに解放されたのだ。

 

以上が私のコンタクトを入れる際の一連の流れである。ちなみに外すときも両目合わせて5分くらい時間がかかる。当然、「このまま一生コンタクトが外れないのではないか」という絶望の時間も存在する。

 

余談だが数年前に一瞬だけ、コンタクトを両目合わせて3分以下で装着することができていた時期がある(外す際も初手で外せていた)。あの頃の私は完全にゾーンに入っていた。まるでマリオがスターを取ったときのような状態で、私はいともたやすくコンタクトを着脱していた。「コンタクトは入れるのではなく、付ける」という感覚を、頭と指先で理解していた。

 

だが、スターの効果はいつか切れる。私はいつの間にか、コンタクト装着に10分かかる元の状態に戻っていた。

 

いつかコンタクトをスムーズに着脱できる日は来るのだろうか。今のところ、その未来は想像できない。